福田
はじめに
Astral社が開発するRust製の高速なpipの代替ツールpip
やpipx
、venv
、poetry
やpyenv
のような機能を包括していると言え、そしてそのすべてが非常に高速に動作します。
本記事では、アップデートした
uv
の公式ドキュメント、GitHubは以下になります。
- 公式ドキュメント:uv
- GitHub:astral-sh/
uv: An extremely fast Python package and project manager, written in Rust.
インストールと自動補完の設定前回の記事でも紹介していますが、まずは、インストールと自動補完の設定を行いましょう。Linux、macOS、WIndowsに対応しています。
上記でインストールした場合には、self update
コマンドにより最新版への更新ができます。
$ uv self update
また、HomebrewやCargo、pipx、Wingetでもインストールができます。
次にコマンドの入力補完を設定します。zshの場合は以下を実行してください。
$ echo 'eval "$(uv generate-shell-completion zsh)"' >> ~/.zshrc $ source ~/.zshrc
そのほかのシェルについては、shell-autocompletionを参照してください。
なお、本記事で紹介するバージョンは0.
$ uv --version uv 0.4.13 (Homebrew 2024-09-19)
機能紹介
はじめにuv
コマンドを実行してみましょう。ヘルプが表示され、多くの機能が備わっていることが分かります。前回の記事ではvenv
とpip
だけが主な機能でしたが、今回はさらに多くのコマンドが追加されています。
本記事ではこの中から、いくつかの機能を紹介します。
$ uv An extremely fast Python package manager. Usage: uv [OPTIONS] <COMMAND> Commands: run Run a command or script init Create a new project add Add dependencies to the project remove Remove dependencies from the project sync Update the project's environment lock Update the project's lockfile export Export the project's lockfile to an alternate format tree Display the project's dependency tree tool Run and install commands provided by Python packages python Manage Python versions and installations pip Manage Python packages with a pip-compatible interface venv Create a virtual environment build Build Python packages into source distributions and wheels cache Manage uv's cache version Display uv's version help Display documentation for a command ...
それぞれのサブコマンドについてもヘルプが表示されます。
$ uv run Run a command or script Usage: uv run [OPTIONS] <COMMAND> ...
また、入力補完を設定していると、コマンドの入力途中でタブキーを押下することでサブコマンドやオプションが参照できます。
$ uv python dir -- Show the uv Python installation directory find -- Search for a Python installation install -- Download and install Python versions list -- List the available Python installations pin -- Pin to a specific Python version uninstall -- Uninstall Python versions
- 公式ドキュメント:コマンドリファレンス Commands | uv
プロジェクト管理と依存関係の追加・管理
プロジェクト管理機能について紹介します。uv
を利用し、pyproject.
で外部ライブラリの依存関係やPythonのバージョンなど、プロジェクトの情報を一元管理できます。またuv.
というロックファイルにより依存関係を厳密に管理し、クロスプラットフォームでの再現性を向上させます。
- 公式ドキュメント
- 概要:Working on projects | uv
- 詳細:Projects | uv
以下のコマンドを利用し、プロジェクト管理の概要を説明します。
uv init
:プロジェクトの初期化uv run
:Pythonファイルの実行- 依存関係
uv add
:追加uv remove
:削除uv sync
:同期
まず、uv init
コマンドでプロジェクト作成します。pyproject.
には、プロジェクトの最小限の情報が記述されます。
$ uv init hello-world
ディレクトリ構造とpyproject.
の内容は以下のようになります。
$ ls hello-world README.md hello.py pyproject.toml $ cd hello-world $ cat pyproject.toml [project] name = "hello-world" version = "0.1.0" description = "Add your description here" readme = "README.md" requires-python = ">=3.12" dependencies = []
uv init
コマンドには、プロジェクトの目的ごとに指定するオプションがあります。必要に応じて指定してください。
uv init --app project_
:アプリケーション全般name (デフォルト) uv init --lib project_
:配布するライブラリname uv init --package project_
:配布するコマンドラインツールname
続いて、作成されたPythonファイルを実行してみましょう。uv run
コマンドでプロジェクトのPythonバージョンで実行できます。また仮想環境.venv
)uv run
コマンドの詳細は本記事の後半で紹介します。
$ uv run hello.py Using Python 3.12.6 Creating virtual environment at: .venv Hello from hello-world!
依存関係の追加には、uv add
コマンドを使用します。uv add
は、pyproject.
に依存関係を追加し、仮想環境にインストールも行います。仮想環境がない場合には自動で作成されます。
ここでは、httpx
ライブラリを追加してみます。
$ uv add httpx Resolved 8 packages in 3ms Installed 7 packages in 6ms + anyio==4.6.0 + certifi==2024.8.30 + h11==0.14.0 + httpcore==1.0.5 + httpx==0.27.2 + idna==3.10 + sniffio==1.3.1 # pyproject.toml に依存関係が追加されていることを確認 $ cat pyproject.toml [project] name = "hello-world" version = "0.1.0" description = "Add your description here" readme = "README.md" requires-python = ">=3.12" dependencies = [ "httpx>=0.27.2", ]
除外する場合には、uv remove
コマンドを使用します。uv remove
は、pyproject.
から依存関係を削除し、仮想環境からも削除します。
$ uv remove httpx uv remove httpx Resolved 1 package in 2ms Uninstalled 7 packages in 15ms - anyio==4.6.0 - certifi==2024.8.30 - h11==0.14.0 - httpcore==1.0.5 - httpx==0.27.2 - idna==3.10 - sniffio==1.3.1 # pyproject.toml から依存関係が削除されていることを確認 $ cat pyproject.toml [project] name = "hello-world" version = "0.1.0" description = "Add your description here" readme = "README.md" requires-python = ">=3.12" dependencies = []
手動でpyproject.
を更新した場合や、クローンしてきたリポジトリがuv
で管理されている場合には、uv sync
コマンドを実行し環境を同期しましょう。uv.
$ uv sync Using Python 3.12.6 Creating virtual environment at: .venv Resolved 1 package in 10ms Audited in 0.06ms
なお、uv
で管理しているプロジェクトの場合、uv pip install
ではなく、uv add
やuv sync
を使うことが公式ドキュメントで推奨されています
新しく作成したプロジェクトの基本的な利用方法を紹介しました。プロジェクト全体をuv
で管理することで、依存関係の管理やPythonのバージョン管理が容易になります。プロジェクト全体の管理が難しい場合には、仮想環境やpip
の代替として、あるいは後述するコマンドラインツールやスクリプトの実行、Pythonバージョンの管理だけを行うのにフォーカスしても良いでしょう。
また、既存のプロジェクトをuv
で管理することもできます。例として公式ドキュメントにFastAPIのプロジェクトをuv
で管理する方法が紹介されています。
- 既存プロジェクトの移行例:FastAPI | uv
uvでのPythonの管理
uv python install
コマンドでPythonをインストールできます。マイナーバージョンの指定も可能です。uv
ではpython-build-standalone
プロジェクトで公開されているPythonをインストールします[1]。
- 公式ドキュメント
- 概要:Installing Python | uv
- 詳細:Python versions | uv
$ uv python install 3.13 Searching for Python versions matching: Python 3.13 Installed Python 3.13.0rc2 in 1.91s + cpython-3.13.0rc2-macos-aarch64-none # マイナーバージョン指定も可能 $ uv python install 3.12.6 Searching for Python versions matching: Python 3.12.6 Installed Python 3.12.6 in 1.50s + cpython-3.12.6-macos-aarch64-none # 複数バージョンのインストールも可能 $ uv python install 3.9 3.10 3.11
ただ、現時点では、uvでPythonをインストールしても、ターミナルでpython
コマンドを実行しグローバルに利用することはできません。この機能のサポートは将来のリリースで予定されてるようです。uv run
を使用するか、uv venv
で仮想環境を作成して利用しましょう。
$ uv venv --python 3.12.6
なお、すでにインストール済みのPythonバージョンを指定した場合、uv
はそのバージョンを再インストールしません。
uv python list
コマンドで、インストール済みのPythonのバージョンとそのPathの一覧を確認できます。
$ uv python list cpython-3.13.0rc2-macos-aarch64-none /Users/jrfk/.local/share/uv/python/cpython-3.13.0rc2-macos-aarch64-none/bin/python3 -> python3.13 cpython-3.13.0b1-macos-aarch64-none /Library/Frameworks/Python.framework/Versions/3.13/bin/python3 -> python3.13 cpython-3.12.6-macos-aarch64-none /Users/jrfk/.local/share/uv/python/cpython-3.12.6-macos-aarch64-none/bin/python3 -> python3.12 cpython-3.12.4-macos-aarch64-none /opt/homebrew/opt/[email protected]/bin/python3.12 -> ../Frameworks/Python.framework/Versions/3.12/bin/python3.12 ... $ uv venv --python 3.12.4 Using Python 3.12.4 interpreter at: /opt/homebrew/opt/[email protected]/bin/python3.12 Creating virtual environment at: .venv Activate with: source .venv/bin/activate
uv tool runによるコマンドラインツールの実行
ruff
やmypy
などのPythonコマンドラインツールを明示的にインストールすることなく利用できる機能です。 プロジェクトの仮想環境とは別に、一時的な仮想環境にインストールされるため、プロジェクト内のパッケージとは依存関係なく利用できます。
- 公式ドキュメント
- 概要:Using tools | uv
- 詳細:Tools | uv
$ uv tool run mypy # uv tool run のエイリアスは uvx $ uvx mypy
もちろん、明示的にインストールしシステム全体で利用も可能です。
$ uv tool install mypy $ mypy
uv runでのスクリプトの実行
uv run
コマンドでPythonのスクリプトを実行できます。Pythonのバージョンを指定した実行が可能です。 また、依存関係のあるスクリプトも容易に実行できます。
- 公式ドキュメント
- 概要:Running scripts | uv
- 詳細:uv run | Commands | uv
$ uv run hello.py Hello world
Pythonのバージョンを指定して実行するには以下のようにします。
$ uv run --python 3.10 version.py 3.10.10 $ uv run --python 3.12 version.py 3.12.6
次に依存関係のあるスクリプトを実行してみましょう。以下のスクリプトでは、rich
ライブラリを使用しています[2]。
そのまま実行しようとするとエラーになります。
$ uv run dep.py Traceback (most recent call last): File "dep.py", line 2, in <module> from rich.progress import track ModuleNotFoundError: No module named 'rich'
--with
オプションで依存関係のあるライブラリrich
)
$ uv run --with rich dep.py For example: ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 100% 0:00:01
さらに、スクリプト内に依存関係を記述することで、依存関係を自動で解決できます。依存関係の追加は、uv add --script
コマンドで行います。 インラインでの定義は、PEP 723 – Inline script metadata | peps.
$ uv add --script dep.py "rich" Updated `dep.py` $ cat dep.py # /// script # requires-python = ">=3.12" # dependencies = [ # "rich", # ] # /// import time from rich.progress import track for i in track(range(20), description="For example:"): time.sleep(0.05)
スクリプト内に依存関係を追加することで、依存関係を解決し実行できます。スクリプトを配布する際に、requirements.
を用意して…… といった手間が省けます。
$ uv run dep.py Reading inline script metadata from: dep.py For example: ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 100% 0:00:01
また、スクリプトの再現性の向上のため、タイムスタンプの指定をexclude-newer
オプションで行うことができます。 いくつかの複雑な依存関係を持つスクリプトにして、実行してみましょう。Pythonバージョンを指定することで、より再現性を向上させます。
asks
、anyio
ライブラリを使用して、非同期でポケモンの名前を取得するスクリプトです。コメントにPythonバージョンと依存関係、exclude-newerを指定しています。
このスクリプトを実行すると、依存関係の解決とタイムスタンプの指定が行われます。タイムスタンプが指定されている場合、タイムスタンプより新しいバージョンはインストールされなくなります。
$ uv run fetch.py Reading inline script metadata from: fetch.py ivysaur ... kingler Time: 1.3258390426635742s asks=3.0.0 anyio=3.7.1
まとめ
8月の記事
わたし自身、2024年5月に別のプロジェクト管理ツール
今回は紹介しませんでしたが、uv pip
も強化されており、個人的にはuv pip compile
でプラットフォームごとの出力やPythonバージョンの指定が有効になった点が個人的に少し嬉しかったです。また、tox
を利用している場合は、tox-dev/
高速なPython linterの
ぜひ、みなさまも